- 2023.09.01
【意外と長い】ディーゼルエンジンの寿命はどのくらいなのか
ディーゼルエンジンの寿命がわからないため、購入に踏み出せずにいませんか?実は、寿命に関する情報が曖昧なまま購入を検討して失敗するケースも少なくありません。なぜなら、ディーゼルエンジンには寿命の他にも、知っておくべき情報がたくさんあるからです。
そこで今回は、ディーゼルエンジンの寿命をはじめ、基本的な情報について詳しく解説します。この記事を読むことで、ディーゼルエンジンへの理解が一層深まるでしょう。ディーゼル車購入の判断材料になったり、節約や節税につながったりするかもしれません。
ディーゼルエンジンの寿命は長いのか
実際、ディーゼルの寿命は長いのでしょうか。ディーゼルエンジンの購入を検討する際、必ず気になるのがエンジンの寿命だと思います。高い費用を払って購入した自動車がすぐに使えなくなるのは避けたいところです。ここでは、詳しい解説の前に結論からお伝えいたします。
【結論】ディーゼルエンジンは寿命が長い
ディーゼルエンジンの寿命は長いです。理由は2つあります。
- ガソリンエンジンよりも頑丈に作られている
- ガソリンエンジンよりも構造がシンプル
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比べて圧縮率が高いです。圧縮率が高いほど負荷がかかるので、ディーゼルエンジンはその分頑丈に作られています。さらに、ディーゼルエンジンにはスパークプラグがありません。
スパークプラグとは、燃料と空気の混合物を点火させるための装置です。燃料と空気の混合物を点火させないと、爆発が起きずピストンが回りません。車はピストンが回ることで動くので、どうにかして点火をさせる必要があります。しかし、ディーゼルエンジンは空気の圧縮熱を利用して点火するのでスパークプラグが必要ないというわけです。
このように、ディーゼルエンジンの寿命は長いです。その証拠に、中古車販売サイトを見てみると、100万km以上走行しているディーゼル車を多く目にします。一方、ガソリン車だと10万km以上のものは滅多に見られません。また、ディーゼル車はトラックのみならず乗用車も存在しますが、そちらも同様に高い人気を博しています。
ガソリンエンジンとの違いとは
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの違いを簡単にまとめると表のようになります。
ディーゼル | ガソリン | |
燃料 | 軽油 | ガソリン |
燃費 | (ガソリン車よりも)燃費が良い | (ディーゼル車よりも)燃費が悪い |
車体価格 | (ガソリン車よりも)高い | (ディーゼル車よりも)安い |
メンテナンス費用 | (ガソリン車よりも)高い | (ディーゼル車よりも)安い |
着火方式 | 圧縮熱による着火 | スパークプラグによる着火 |
走行の特徴 | 乗り心地には欠けるが、力強い走り | 振動や騒音が少なく、高スピードまでの加速に長けている |
自動車の価値としての優劣はつけ難く、目的に合った方を選ぶと良いでしょう。なお、ディーゼル車のメリットとデメリットに関しては記事の後半にて解説しています。
使い方によっては寿命が縮まる可能性も
先ほど、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも頑丈だと解説しました。しかし、使い方によっては寿命が縮まることがあります。例えば、停止と発進の繰り返しです。ディーゼルエンジンは、燃料を燃やすとすすを排出します。すべてのディーゼルエンジンにはすすを処理するシステムDPFが搭載されていますが、一定のスピードと距離を出さないと作動しません。
そのため、停止と発進を繰り返していると、DPFが作動せずにすすだけが溜まっていく状態になります。すすは排出口に蓄積され、パワーの低下やエンジンの劣化という事態を招きます。なお、ガソリンエンジンは、発進と停止を繰り返しても劣化はそれほど激しくありません。
正しく使用すればロングライフで使用可能
1つ前の章で、ディーゼルエンジンは使い方によって寿命が縮まることもあると解説しました。しかし、短いスパンでの停止と発進の繰り返しにさえ注意していれば、ロングライフでの使用ができます。なぜならディーゼルエンジンは、エンジン始動時あるいは再発進時に最も負荷がかかるからです。
つまり「走り続ける」という行為だけでは、エンジンにそこまで負荷はかかりません。その証拠に、長い距離を走ったディーゼル車でも、問題なく買い取られるケースが多いです。
ディーゼルエンジンの寿命を縮めるNG行為3選
寿命の長さが特徴とはいえ、不適切な使い方をすればディーゼルエンジンの寿命は短くなるでしょう。そこで、ここからはディーゼルエンジンの寿命を縮める行為として、以下の3つをご紹介します。
- エンジンオイルを交換せずに使用する
- 長い期間放置する
- エンジン始動後すぐに走行する
ディーゼル車購入したての方でも実践可能です。ぜひ参考にしてください。
エンジンオイルを交換せずに使用する
エンジンオイルを交換せずに使用し続けると、オイルが汚れたり潤滑作用が悪化したりします。そのまま放置していると、燃費が悪化したり部品がすり減ったりするアクシデントが起きるでしょう。とはいえ、エンジンオイルの交換は簡単ではありません。面倒だと感じたり、交換できるか不安だと感じたりするでしょう。
そのような場合は、業者に依頼するのも1つの手です。自分で交換するよりも早く終わった、というケースも少なくありません。放置すると最悪の場合、エンジン丸ごと交換になりディーゼルエンジンの頑丈さを無駄にすることになります。
長い期間放置する
エンジンを長い期間放置するとDPFに汚れが溜まります。DPFとは、すすを処理するための装置です。フィルターですすを集めて、燃やして処理する役割を担当しています。エンジンを動かさないと、DPFのフィルター汚れやすすが処理されません。処理されていない汚れが放置されると、詰まりや腐食によってDPFの故障につながります。
解決策は定期的にディーゼル車を走らせることです。その際、停止と発進が少ない環境で30分以上は走らせると良いでしょう。しかし、停止と発進が少ない環境が近くにないという方もいらっしゃるはずです。その場合は、お近くの道路でも問題ありません。肝心なのは、とにかくDPFを稼働させることです。すすを燃焼させて、フィルターを綺麗に保ちましょう。
エンジン始動後すぐに走行する
エンジン始動後すぐに走行すると、エンジンの寿命を縮めてしまいます。なぜなら、エンジンが冷めているからです。人間の体と同じで、エンジンを冷めたまま動かすと消耗が激しく、パフォーマンスを十分に発揮できません。そのため、暖機運転をしてエンジンが温まるまで待つ必要があります。
暖機運転には2種類のやり方があります。
- 停車したままの暖機運転
- 走行中の暖機運転
1つ目は、停車したままの暖機運転です。エンジン始動後10分ほど待つだけで終わります。エンジン周りの機関が温まるので、発進時の負荷を軽減することが可能です。2つ目は走行中の暖機運転です。エンジン始動後、低回転での走行をしつつエンジン周りを温めます。
エンジン以外の機関も温められるので、より負荷を軽減させることが可能です。また、暖機運転をしながら走行できるので、時間の節約や排気ガスの軽減にもつながります。
ディーゼル車の修理費を場面ごとに解説
ディーゼル車の修理費はいくらなのでしょうか。また、ガソリン車と比べてどのような違いがあるのでしょうか。この章では、ディーゼル車の修理費を以下の場面に分けて解説します。
- 誤ってガソリンを入れてしまった場合
- エンジンオイルが漏れてしまった場合
- エンジンが始動しない場合
誤ってガソリンを入れてしまった場合
ガソリンの誤給油には3万円〜30万円の修理費がかかります。
修理の内容 | 修理費 |
タンク内の清掃と給油 | 3〜5万円 |
エンジン周りや燃料周りの全部品の交換 | 20〜30万円 |
ディーゼル車の燃料は軽油です。そのため、ガソリンを入れてしまうと、エンストを起こしたりエンジンがかからなくなったりします。もしも、ガソリンを入れてしまったら、速やかに業者に連絡して修理してもらいましょう。決して走行してはいけません。走行中に気付いた場合は、速やかに安全な場所に停車し業者に連絡してください。
エンジンオイルが漏れてしまった場合
エンジンオイル漏れの修理費は数千円〜100万円です。
修理の内容 | 修理費 |
緩んだボルトを締める | 数千円 |
オイルシールの交換 | 1.5〜2万円 |
オイルパンの交換 | 2〜3万円 |
エンジンの組み直し | 20〜100万円 |
外に漏れ出したオイルは少量でも、内部では大量のオイルが漏れていることがあります。エンジンオイルは、部品同士の潤滑やエンジン冷却が役割です。エンジン漏れを放置しておくと部品同士が傷つけあったり、エンジンがオーバーヒートを起こす恐れがあります。最悪のケースでは廃車になるかもしれません。
車の寿命を伸ばすためにも、エンジンオイル漏れを確認したら速やかに業者に連絡してください。
エンジンが始動しない場合
エンジンが始動しない場合の修理費は表のとおりです。
修理の内容 | 修理費 |
上がったバッテリーの修復 | 4000円〜3万円 |
燃料切れ | 5000〜1.7万円 |
セルモーターの修理や交換 | 3000円〜7万円 |
オルタネーターの修理 | 3万〜12万円 |
エンジンが始動しない原因は多岐にわたります。そのため、上記の表では代表的なものだけをご紹介しました。場合によっては、表に記載してある内容に当てはまらないこともあるかもしれません。その際は、速やかに業者に連絡してレッカー車の手配などを行ってください。有識者の指示をあおいで被害を最小限におさめましょう。
ディーゼル車のデメリット
ディーゼルエンジンのデメリットといえば、以下の7つがよく挙げられる
- 車体価格が高い
- メンテナンス費用が高い
- 燃料が凍る可能性がある
- 自動車税が高くなるタイミングが早い
- ディーゼル車の規制が強くなっている
- 走行中の快適さに欠ける
- ちょい乗りには向かない
購入後に思わぬアクシデントを起こさないためにも、あらかじめデメリットを確認しておくようにしてください。
車体価格が高い
ディーゼルエンジンを搭載した車は、車両価格が高い傾向にあります。理由としては、車体を頑丈に作らなければならないからです。ディーゼルエンジンが主流のトラックですが、乗用車と比べて荷物を載せる機会が圧倒的に多いです。そのため、荷物の重量に耐えられるようなボディにしなくてはいけません。
頑丈に作るとそれだけ製造コストがかかります。燃費の良さが長所のディーゼルエンジンですが、高い車体価格という短所を打ち消すためには長い時間が必要になるでしょう。
メンテナンス費用が高い
ディーゼル車はガソリン車に比べてメンテナンス費用が高い傾向にあります。その理由は以下のとおりです。
- エンジンオイルを頻繁に交換する必要がある
- エンジンオイルが高い
- アドブルーが必要
ディーゼル車のエンジンオイルはすすを浴びるので、ガソリン車に比べると汚れるのが早いです。業務で長距離を走るとなれば、さらに汚れるスピードは早まるでしょう。それに加えて、ディーゼル車のエンジンオイルはガソリン車と比べて高い傾向にあります。高いエンジンオイルを頻繁に交換するとなると、必然的にメンテナンス費用はかさむでしょう。
また、ディーゼルエンジンにはアドブルーが使われています。アドブルーは、排気ガス中の有害成分を軽減するための液体です。液体なので走行すると消費され続け、底を尽きるとエンジンが始動しなくなります。なお、アドブルーの価格は20Lで5000円ほどです。
燃料が凍る可能性がある
軽油は寒い地域だと凍結する恐れがあります。その理由は、低い気温の下では軽油の流動性が低くなるからです。そのため、ガソリンよりも早く凍結してしまいます。エンジンが温まっているうちは問題ありません。エンジンが冷めて、長い間放置するときには注意が必要です。
もし寒い地域に長い間放置する場合は、現地にて給油を行いましょう。現地のスタンドには、凍結防止剤が含まれた軽油が用意されているはずです。凍結防止剤の含まれた軽油は、含まれていない軽油と混ぜても効果があります。凍結の心配がある方は、少量でも給油しておくと良いでしょう。
自動車税が高くなるタイミングが早い
自動車税は、自動車を所有してから一定の時間が過ぎると高くなります。その時間はディーゼル車とガソリン車で異なり、ディーゼル車の方が短いです。具体的なタイミングは以下の表を参照してください。
自動車税が高くなるタイミング | |
ディーゼル | 新車登録してから11年後 |
ガソリン | 新車登録してから13年後 |
自動車税が高くなる理由は、環境への負荷が少ない車への乗り換えを促すためだとされています。国は最新の車は環境負荷が少ないと考え、平成13年より自動車税の重課制度を実施し始めました。ディーゼル車の方が重税のタイミングが早くなる理由は、ディーゼル車の方が環境への負荷が大きいと判断されたからです。
ディーゼル車の規制が強くなっている
昨今、ディーゼル車の規制は強くなっています。その証拠に、今まではエコカー減税の対象だったクリーンディーゼルも、2023年には減税対象外になったことが経済産業省から発表されました。クリーンディーゼルとは、従来よりも環境に配慮した設計のディーゼルエンジンです。なおこの先、ディーゼル車の規制がどうなるかは不明です。
走行中の快適さに欠ける
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べると、走行中の騒音や振動が大きいです。そのため、車内の快適さが損なわれたり大きな音が周りに響いたりするケースもあります。深夜の住宅街の走行に気が引けるという方も少なくありません。
最近では、騒音や振動のデメリットを打ち消す静かなディーゼルエンジンも開発されています。使い方によっては、このデメリットを打ち消せることもあるでしょう。
ちょい乗りには向かない
ディーゼルエンジンにはすすを処理するDPFが搭載されています。DPFを作動させるためには、エンジンの高回転や長距離走行をしなければいけません。ですので、短い距離での走行を繰り返すと、DPFが作動せずにすすが溜まりっぱなしになってしまいます。
すすの溜まりっぱなしは故障につながるため、ディーゼル車はちょい乗りをする方にとっては不向きかもしれません。
ディーゼル車のメリット
ディーゼル車には次のようなメリットもあります。
- ガソリンエンジンよりも燃費が良い
- ガソリンよりも安価な軽油が燃料である
- パワフルな走行を実感できる
これらのメリットは他のエンジンにはありません。ディーゼル車購入後のカーライフを楽しむためにも、ぜひ参考にしてください。
ガソリンエンジンよりも燃費が良い
ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも燃費が良いです。参考として、トヨタのランドクルーザーを例にあげます。
グレード | TX“Lパッケージ” 2.7L ガソリン (5人乗り) | TX“Lパッケージ” 2.8L クリーンディーゼル (7人乗り) |
エンジン | ガソリン | ディーゼル |
燃費(WLTCモード) | 8.3km/L | 11.2km/L |
ディーゼル車の方が燃費が良いのは、軽油とガソリンを比べたときに軽油の方がエネルギー密度が高いことが理由です。長く使用すれば、車体価格の高さというデメリットをカバーできるかもしれません。
参照:トヨタ ランドクルーザー プラド | トヨタ自動車WEBサイト
ガソリンよりも安価な軽油が燃料である
ディーゼル車の燃料は軽油です。軽油はガソリンよりも安価なので、ディーゼル車の方が燃料費が安いということになります。なお、具体的な価格は以下のとおりです。
燃料 | 軽油 | ガソリン |
全国平均価格(1Lあたり) | 152円 | 174円 |
都道府県別でも、軽油の価格がガソリンの価格を上回っているところはありません。ディーゼル車は燃費も優れているので、燃料に関するランニングコストであればガソリン車よりも安く抑えることができます。
パワフルな走行を実感できる
ディーゼルエンジンは加速性能が良いことでも知られています。発進の際、アクセルを深く踏まずともすぐに任意のスピードまで到達するパワフルさが特徴です。そのため、信号待ちに対してストレスを感じずにすんだり、坂道でも馬力が不十分になったりすることはありません。
また、トルクが最も力を発揮する時点でのエンジンの回転数を比べると、ディーゼルエンジンの方が少ないです。つまり、同じ量の燃料を使用した場合、ディーゼルエンジンの方が強いパワーを発揮できるということです。このような特徴があるため、トラックなどの積載量が多い車両にディーゼルエンジンは用いられています。
まとめ
ディーゼルエンジンの寿命は長いですが使い方によっては他のエンジンよりも寿命が短くなります。本記事では寿命を縮めるようなNG行為を解説しているので、参考にしつつカーライフを楽しんでください。
なお、寿命が尽きたディーゼル車でも買い取ってくれる業者は存在します。もしも、ディーゼル車の買取をご検討であれば、車買取サービス「ソコカラ」にご相談ください。自動車買取のプロがお客様に合わせて、丁寧に対応させていただきます。
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浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
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