- 2020.09.29
自動車業界における事故車と修復歴車の定義を知っておこう!
中古車を購入しようと思っているとき、事故歴や修復歴の有無を確認する方は多いのではないでしょうか。
事故歴と修復歴は同じ意味だと思われることが多いですが、それぞれ明確な定義があり、しっかりと知識をつけた上で車を購入しなければ後のトラブルへと発展しかねません。
この記事では、どのような車が「事故車」でどのような車が「修復歴車」と定義されるのかをご紹介した上で、もし購入しようと思っている車が事故車や修復歴車だった場合の確認ポイントについて徹底解説いたします。

自動車業界における事故車と修復歴車の定義とは?
一般の人が思う事故車や修復歴車の違いや定義は、自動車業界とは異なる認識を持っている可能性があります。
まずはそれぞれの正しい知識を知っておきましょう。
●事故車
自動車業界における事故車の定義とは、名称の通り交通事故に遭った車のことを指します。
正面衝突をして窓ガラスが割れ車体がへこむような大きな事故に遭った車も、すれ違い事故をして擦れて傷がついてしまった小さな事故も、事故の大小に関わらずすべて「事故車」にあてはまります。
●修復歴車
自動車業界における修復歴車の定義とは、交通事故やその他の理由によって、自動車の骨格部分が損傷し、修復をした経歴がある車のことを指します。
この定義は、一般社団法人自動車公正取引協議会、一般財団法人日本自動車査定協会、一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会が設定しています。
“修復歴”に残るパーツと残らないパーツ
「骨格部分を損傷し修復した車が修復歴車」と前述しましたが、車の骨格部分とは一体どこにあたるのでしょうか。
修復歴に残るパーツと残らないパーツについて解説します。
●修復歴に残るパーツ
・フレーム(サイドメンバー)
・クロスメンバー
・インサイドパネル
・ピラー
・ダッシュパネル
・ルーフパネル
・フロア
・トランクフロア
・ラジエーターコアサポート
上記の9つが車を形成する骨格部分にあたり、いずれか1箇所でも修復をしたことがあれば、修復歴車と判断されます。
ラジエーターコアサポートは、修復ではなく交換で修復歴車となります。
●修復歴に残らないパーツ
・ロアスカート
・ドア
・フロントフェンダー
・ボンネット
・サイドシルパネル
・リアフェンダー
・フロントバンパー
・トランクリッド
上記の8つは骨格部分にはあたらないため、修復しても修復歴車とは判断されません。
これらのどこかを修復しているから修復歴車だ!と思っても、自動車業界では修復歴車には含まれないため注意しましょう。
事故車や修復歴車を見分けるには?
事故車を中古車販売店で販売する場合、事故車であると開示する義務はありません。
そのため、交通事故を起こした車を中古車として販売していても違反にはあたらず、なかなか見分けることが難しいでしょう。
しかし、修復歴車を販売する場合は、すべての人に修復歴車であると開示する義務があります。
そのため、修復歴のある事実を隠して販売していると罰則が科せられます。
こういった開示の義務が必要か不要かという点も、業者と購入者の間で認識の相違が生まれやすい部分です。
後のトラブルへと発展しないためにも、自らも修復歴車を見分けられるように確認ポイントをおさえておきましょう。
1、査定表を見せてもらう
査定表には修復歴を記載する部分が存在します。
修復歴の有無は査定の段階で必ず査定員が気づくので、総合評価の部分に「R」の文字があれば修復歴がある証です。
査定表を見せてもらえない、具体的な説明をしてもらえない、などの場合は購入を避けたほうがよいでしょう。
2、保証期間を確認する
中古車も新車のように保証期間があるので確認しておきしょう。
保証期間中は車が故障しても、無料または安価で修理をしてくれることが多いので安心です。
あまりにも保証期間が短いと修復歴車である可能性が高くなるため、最低でも1年間は保証期間がある車を選ぶとよいでしょう。
3、車の見た目を確認する
骨格部分を損傷しているとなると、綺麗に修復しても多少の違和感が目に見えてわかる部分があります。
塗装を塗り直した形跡はないか、あるはずのない部分に隙間はないか、車体の左右の歪みはないか、など目視できる範囲で車の見た目を確認しましょう。
4、試乗をしてみる
やはり、最後は実際に自分で車に乗ってみて確かめるのが1番わかりやすいでしょう。
ハンドルをいじらずに直線道路を走ると左右に曲がってしまうなどの現象が起きた場合、修復歴がある可能性がとても高いです。
運転をするときに少しでも違和感がないか、しっかり確かめておきましょう。
修復歴車に乗るデメリットとは?
正直に、どれだけ綺麗に修復された車でも、新車レベルに戻ることはありません。
一度修復を行った車に乗ることが気になる方は、修復歴車デメリットを確認しておきましょう。
1、安全性が低い
車を形成するのに重要な骨格部分を修復しているとなると、いつどこで正常な走行ができなくなってしまうかわかりません。
最初は異常なく走ることができていても、ブレーキがきかなくなる、異音が発生する、まっすぐ走れず左右に曲がる、など修復歴のない車に比べると劣化が早く、安全面に危険が生じてしまう可能性があります。
必ずしも上記のような問題が起きるわけではありませんが、修復歴車を運転する場合は安全面のリスクを抱えなければならないでしょう。
2、売却時の買取金額が低い
修復歴車を購入する場合、安価で手に入れられる部分がメリットではありますが、その反面売却する場合も高値がつかないことが多いです。
中古車販売店やディーラーでは、「中古車の買取」を専門としているため、車として再利用する価値がないと判断されると、買取金額が低い場合や買取自体を断られてしまうこともあるでしょう。
修復歴車を購入して後に手放すことになったとき、買取金額は安価になってしまうことを想定しておきましょう。
3、走行性能以外で問題が出る
修復歴車は走行性能以外でも問題がある車両が多くあります。
例えば、事故の影響からフレームが歪み雨漏れの原因になったり、ドアが閉まりにくいなどパーツ単位で機能しない場合も多いです。
車を運転するだけであれば問題ありませんが、外見では判断しにくいうえに購入後に気づくケースがほとんどです。
注目されにくい部分ですが、大雨の際に初めて問題に遭遇すると後悔してしまうことでしょう。
走行性能以外の問題は販売店のスタッフも気づいていない場合が多いので、説明を受ける段階でも気づけないと考えておいたほうが良いでしょう。
補償が手厚い販売店であれば購入後の修理を希望できるため、万が一に備えるためにも補償が付いている店舗で購入するようにしてください。
事故車を売却する際の注意点
事故車を売却する際の注意点について解説します。
注意点を踏まえておけば、売却の際に損をする可能性を減らすことができます。
より高額で買い取ってもらうためにも注意点は必ず踏まえておきましょう。
事故車であることを隠さない
事故車であることを隠して売却することを避けましょう。
事故車を売却する場合、査定の際に事故車であることを申告する義務があります。
査定のプロである査定士が売却する車を査定するので、ごまかしてもバレる可能性が高いです。
取引後に事故車だと発覚した際はトラブルに発展して、最悪の場合は損害賠償を請求される可能性もあります。
損害賠償請求まで発展しなくても、発覚した時点で本来の査定額よりも下回る金額で取引される場合がほとんどです。
査定に出す際に最初から事故車であると包み隠さずに伝えるようにしましょう。
複数業者から見積もりをとる
事故車を売却する際は複数業者から見積もりをとるようにしましょう。
業者によっては海外への販路を持っていたり、自社で解体から販売まで行っている業者もいます。
海外への販路が確保されていたり、自社で解体を行っている業者は事故車でも買い取れば利益になるので、通常の業者よりも高い金額で買い取ってくれます。
1社だけ見積もりをとって査定してもらうよりも、多くの業者に見積もりを出してもらった方がより高額で買い取ってもらえるでしょう。
査定額が出揃ったら比較できるので、最も査定額が高い業者に依頼してください。
1社だけに査定を依頼すると査定額が相場より低くても気づきにくいです。
必ず複数業者から見積もりをとって、査定額を比較するようにしましょう。
ローンの残高を確認する
ローンの残高が一括で完済できるかどうか確認しておきましょう。
ローンを組んでいる場合は、車の所有者はローン会社です。
そのため、ローンを完済できる場合のみ車の売却をすることができます。
買取金額をローンの返済に充てることも可能なので、査定額に加えて自分が一括で返済できる金額がローン残高に足りれば問題なく売却可能です。
もちろん、査定額がローン残高を上回っていれば、自己負担は必要ありません。
査定額に足りなかった分のローン残高は自己負担になると把握しておきましょう。
事故車と修復歴車の定義を知り知識を身につけておこう
このように、中古車販売店などの自動車業界と購入者の間で「事故歴」と「修復歴」に対する認識が違うことでトラブルへと発展するケースは多々あります。
中古車を購入するときは、何もわからない状態や曖昧な状態のまま購入するのではなく、交通事故を起こしてしまった車すべてが「事故車」、骨格部分を損傷し修復した車すべてが「修復歴車」という定義を知り、デメリットや見分け方の知識を身につけ、安全な車選びをして下さい。

この記事の監修者
浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
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