- 2022.07.12
事故車を廃車にする前に!廃車のメリット・デメリットや保険金廃車以外の選択肢を知っておこう
事故を起こして車が大きく損傷した場合、その事故車を廃車にしようか悩むところです。しかし、本当に廃車にしてしまって良いのでしょうか。廃車する前に廃車のメリットやデメリットなどを把握することで最善の選択ができます。
本記事では、事故車を廃車するべき判断基準やメリットやデメリット、事故した場合に受け取れる保険金などについて解説します。

事故車を廃車にする判断基準とは?
事故車を廃車にすべきかどうかどのような基準によって判断すれば良いのでしょうか。事故車を廃車にする際には主に3つの判断基準について解説します。
・物理的全損
・物質的全損
・維持費が高額
下記では、それぞれの判断基準について詳しく解説します。
物理的全損
物質的全損とは、事故車が修理不可レベルの損害を受けた状態のことを指します。修理不可能な損傷なので、廃車にする以外の選択肢はありません。愛着がある車であっても、物理的全損の状態で車を走らせることは非常に危険です。潔く廃車の手続きに入りましょう。
経済的全損
経済的全損とは、修理すれば走行できるものの、修理費用が車の時価総額を上回ってしまう程の損傷を受けた状態のことを指します。たとえ事故車の修理が可能だとしても、時価総額より低い場合は買い替えた方が経済的にお得です。
たとえば、時価総額50万円の事故車の修理代が80万円の場合が経済的全損にあたります。
愛着がある車の場合には、修理代を出したくなるかもしれませんが、基本的に経済的全損の場合には廃車をおすすめします。
維持費が高額
同じ車を長年使用していると維持費が徐々に高くなってきます。車は年式が13年を超えると自動車税が15%アップします。
また、年式が古くなることで新型モデルと比べて評価が低くなり、事故のリスクが高まるため、年式の古い車は任意で加入する自動車保険料も少し高くなります。
事故車を廃車にするメリット
事故車を廃車することで、主に金銭面のメリットがあります。
・自動車税等を支払わずに済む
・自動車重量税を支払わずに済む
・自賠責保険を支払わずに済む
・還付金を受け取れる
下記では、それぞれのメリットについて簡単に解説します。
自動車税を支払わずに済む
自動車税とは、車の排気量に応じて課される都道府県税です。廃車手続きを行うことで自動車税の支払いをストップできます。
自動車税は、車の排気量によって納める税金額が異なります。たとえば、軽自動車(自家用乗用車)の場合は、1年間分で10,800円。 2000ccの自家用乗用車なら「1500cc超2000cc以下」に当たるので、1年間分で3万9500円となります。さらに、グリーン化制度により、4月1日時点で新規登録後13年を越える登録車の場合には、約15%の割増重課税が発生します。
自動車税の税額について詳しく知りたい人は、「国土交通省の自動車税について」を確認してみてください。
自動車重量税を支払わずに済む
自動車重量税は、自動車税と同じく車にかかる税金のひとつで、「車の重さ」に対して毎年かかる税金です。
自家用乗用車(軽自動車以外)の場合は、車両重量0.5トンごとに年間4,100円を納付します。自家用乗用車(軽自動車)の場合は、車両の重さにかかわらず定額で、年間3,300円を納付します。
また、新車登録から13年以上・18年以上経過している車に対しては、環境負荷が大きくなるため、税負担が徐々に増える設定となっています。
自動車重量税の税額について詳しく知りたい人は、「国土交通省の自動車重量税について」を確認してみてください。
自賠責保険を支払わずに済む
自賠責保険は、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保するための保険です。
自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられており、自賠責保険に入っていなければ運転することはできません。
自賠責保険の保険料は、普通自動車や軽自動車、原付自転車などの種類によって金額が決められています。
参考例として、普通自動車の自家用車の場合の自賠責保険料を下記に示します。
12ヵ月:12,700円
13ヵ月:13,310円
24ヵ月:20,010円
25ヵ月:20,610円
36ヵ月:27,180円
37ヵ月:27,770円
自賠責保険の保険料について詳しく知りたい人は、「国土交通省の自賠責保険について」を確認してみてください。
還付金を受け取れる
還付金とは、支払いすぎていることを理由に納税者へ返還されるべき税金のことを指します。
自動車税は、毎年5月に4月~翌年3月までの分を前払いしているため、廃車手続きを行うことで、還付金を受け取れます。
事故車を廃車にするデメリット
事故車を廃車することは、メリットだけではありません。事故車を廃車にする際には、主に2つのデメリットがあります。
・廃車の手続きが面倒
・廃車費用がかかる
これらは、メリットを享受する前に立ちはだかる壁と言えるでしょう。下記では、それぞれについて詳しく解説します。
廃車の手続きが面倒
事故車を廃車するには、車を解体する、必要書類を準備する、運輸支局に出向くなど、さまざまな手続きが必要になります。運輸支局の窓口は、平日の日中しか開いていないため、一般的な会社員にとってはスケジュールを合わせることが難しいでしょう。
事故車を廃車にしたいと思っても、手続きが面倒であるため、そのまま放置してしまうケースも少なくありません。
廃車費用がかかる
事故車を解体する場合にも解体費用がかかります。解体業者へ事故車を持ち込むためにはレッカー代がかかります。レッカー代は、走行距離が長ければ長いほど費用が高くなるため、解体業者が近くにない場合には費用がかさみます。
このように、事故車を廃車にすることで自動車税の納税義務がなくなり、還付金が受け取れるとしても、廃車する際に費用がかかるため手続きすることに抵抗が出てきます。
廃車にかかる平均的な費用は、レッカー代が1~3万円程度、解体費用が1~2万円程度、業者に依頼する費用が1万円程度かかります。
事故で全損した場合の保険金
車両ごとに任意で加入する自動車車両保険は、交通事故を始め盗難や災害などで車両が損害を受けた場合、その修理費や買い替え費用、その他諸費用を補償する保険です。事故車両が「全損」したときの保険金はどのくらい受け取れるのでしょうか。
前提として、車両保険に加入していても事故車両の修理費や買い替え費用が全額補償されるわけではありません。特に「全損」の補償を巡っては、保険会社と事故当事者間でのトラブルが散見されます。
下記では、受け取れる保険金について、単独事故で全損した場合と相手方がいる事故で全損した場合の保険金について解説します。
単独事故で全損した場合の保険金
自動車事故が起きた際、常に相手方がいるとは限りません。ハンドルを間違えて切ってしまい、電柱やガードレールにぶつかってしまうなど、相手がいない場合は単独事故に分類されます。
対象となる相手がいない単独事故で全損させた場合、保険金は契約時に決めた金額の上限額で支払われます。盗難が原因の全損も同様です。
相手方がいる事故で全損した場合の保険金
相手方がいる事故で全損した場合、受け取れる保険金の上限は該当車両の時価総額を上限を目安とします。
ただし、相手方の対物賠償保険に「対物超過特約」が付帯している場合は、車両の時価総額を超えた保険金を請求できます。その他にも自身が加入する車両保険に「新車特約」や「全損時諸費用特約」などを付帯させておくことで、乗り換え車両購入時の負担を軽減可能です。
事故車を廃車にすると保険金はどうなる?
事故車を修理せず廃車にする場合にも保険金は受け取れるのでしょうか。保険会社に無断で廃車してしまうと、保険金は受け取れなくなってしまうのでしょうか。下記では、事故車を廃車する際の保険金について解説します。
事故車を修理せずとも保険金を受け取れる
勘違いされやすいのですが、車両保険の保険金は大破した車を修理しない場合でも保険金の請求は可能です。車両保険は車両に発生した損害に対して補償を行う保険であり、修理実施の有無は受給要件ではありません。
なお、事故の相手方も任意保険に加入していた場合は、事故の過失割合に応じてそれぞれの保険会社から保険金が発生します。過失割合とは当該事故における責任の割合です。自身の過失が3割と判断された場合、自身の保険会社から保険料の3割が支払われ、残りの7割は相手方の保険会社から支払われます。
事故車の引き取りを保険金支払いの要件とする保険会社もある
事故車両の廃車で注意すべきことは、車両保険の保険金支払いに「該当車両の引き取り」を要件にしている保険会社があることです。保険料の請求手続きを済ませる前に廃車手続きを済ませてしまった場合、保険の適用要件を満たすことができません。
また、車両を引き渡すと車両の所有権も保険会社に移るため、以降は自身での廃車手続きができなくなります。車両の引き取りを保険適用の要件とするかは保険会社ごとで規約が異なるため、自身で加入している保険会社に確認しておきましょう。
保険金を申請せずに事故車を廃車にする場合
多くの場合、廃車の査定額よりも保険金の方が高額なため、素直に保険金を申請した方がお得です。ただし、長期的に見ると保険金を受け取らずに自身で廃車手続きした方がお得に済む場合もあります。ここでは保険金を受け取らずに事故車両を廃車するメリットとデメリットを紹介します。
メリット:保険金が据え置かれる
保険金を受け取らずに事故車両を廃車するメリットのひとつが「保険料の据え置き」です。交通事故の補償をする保険では、加入者間で保険料負担の不公平が生まれないよう、事故のリスクに応じた等級で加入者を分類します。
等級は1〜20で管理され、新規加入時は原則として6等級です。無事故を継続すると1年ごとに1等級ずつ上がり、保険料も引き下げられます。逆に事故を起こし保険金を請求した際の下げ幅は3等級です。元の等級に戻るには最低でも4年掛かり、その間は以前よりも割高な保険料を支払います。
等級のダウンは「事故を起こしたか」ではなく「保険金を申請したか」が判断の基準です。事故車を自身で廃車し保険金を申請しなかった場合は等級も変化せず、保険料も据え置かれます。
デメリット:車の買い替えが全額自己負担となる
保険金の受け取り手続きをしないデメリットは、やはり買い替え費用を全て自分で負担しなければならない点です。ただし、保険金を請求した場合でも、事故車両の年式が古いと十分な金額が受け取れない場合もあります。
保険会社の規約により廃車手続きと保険金申請を同時に行えない場合は、等級の降格により発生する保険料の割増と、実際に受け取れる保険金の金額を比較して対処方法を決めましょう。
事故車を廃車にする以外の選択肢は?
事故車を廃車にする以外にも事故車を処理する方法はあります。事故車を廃車にする以外の選択肢は主に2つです。
・事故車を修理する
・事故車を買い取ってもらう
下記では、それぞれの選択肢について解説します。
事故車を修理する
物理的全損や経済的全損ではない事故車の場合は、単純に修理した方が良い場合も多いです。損傷部位や修理方法によって費用は変わるので、修理依頼する会社に事前に算定してもらいましょう。修理費用と廃車費用を天秤にかけて判断することをおすすめします。
事故車を買取ってもらう
事故車でも損傷が軽い場合には、売却が可能なこともあります。買取をしてもらえれば、廃車費用がゼロになるどころかプラスになるので、少しでも費用を安く抑えたい人は廃車買取業者で査定してみることをおすすめします。
車両保険を活用して賢く車を買い替えよう
本記事では、事故車を廃車するべき判断基準やメリットやデメリット、事故した場合に受け取れる保険金などについて解説しました。
事故車両の廃車手続きをする際は、保険金の受け取りに支障がないかを確認しておきましょう。また、車両保険の保険料を請求する際は、等級の低下や全損時の補償上限に注意が必要です。交通事故はいつ誰が被害にあうか分かりません。不足の事態に備え、車両保険や各種特約の内容を見直しておきましょう。

この記事の監修者
浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
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