車を運転している最中にエンジンから「カンカン」「カラカラ」といった金属音が聞こえたり、車体がガタガタと揺れたりする現象を「ノッキング」といいます。ノッキングには複数の種類がありますが、放置しているとエンジンが壊れてしまうパターンもありますので、原因のチェックと対処が必要です。今回は、車でノッキングが起こってしまう原因と、ノッキングが発生したときの対策を紹介します。
エンジンのノッキングはどんな意味?
「ノッキング」という言葉は、日常ではドアを叩く動作を指しますが、自動車の世界では、ガソリンエンジン内部で起こる異常燃焼によって発生する音や振動を意味します。ガソリンエンジンは、空気とガソリンの混合気に点火プラグで火をつけ、燃焼させてパワーを生み出す仕組みです。ところが、点火プラグによる着火とは別に、混合気が自ら燃え始める現象が「ノッキング」と呼ばれるのです。この自己着火は、燃焼室内の温度や圧力が高くなり、未燃焼の混合気が勝手に燃え出すことで起こります。
ノッキングを理解するには、エンジンの動作原理を知ろう
ノッキングを理解するためには、エンジンの仕組みを知ることが大切です。ガソリンエンジンは、
①吸気、②圧縮、③燃焼・膨張、④排気という4つの工程を通して動力を生み出します。
① 吸気

吸気バルブが開かれると、ピストンが下降を始め、空気とガソリンがシリンダー内に吸い込まれます。ピストンが最下点に達すると、吸気バルブが閉じられます。
② 圧縮

ピストンが下降から上昇へと動き出すと、空気とガソリンが混ざり合った混合気は、ピストンの動きによって圧縮されていきます。
③ 燃焼・膨張

圧縮された混合気は点火プラグで点火されると爆発、燃焼します。その熱が膨張することによってピストンが押し下げられます。
④ 排気

押し下げられたピストンは上昇して排気バルブが開かれて、燃焼したガスは排気となって排出されます。
ノッキングの原因は複数の種類がある
一言にノッキングといっても複数の種類があり、それぞれ原因が異なります。ここではノッキングのおもな種類とそれぞれの原因について説明します。
カーノック・低速ノッキング
運転している最中に車体がガクガクと揺れる現象のことです。運転速度に対してエンジンの回転数が低すぎるときに発生しやすく、たとえばマニュアル車を2速以上で発進させたり、高いギアのまま右左折したりすると不快な揺れが生じます。
また、マウントが劣化してエンジンやミッションの振動を十分に吸収できないときに生じる揺れもカーノックに分類されます。
デトネーション
デトネーションとは、シリンダー内で発生した超高圧・超高温な異常燃焼のことです。本来、4サイクルエンジンは吸入→圧縮→燃焼→排気という過程を経てピストンを上下させ、車を動かす原動力とします。
デトネーションによってピストンやシリンダーが大きな衝撃を受けると、「キンキン」「カタカタ」などハンマーで金属を叩いたような音が聞こえてくるのが特徴です。大きな衝撃を受けると、エンジン内の部品が破損する可能性もあるので早急な対策が必要です。
プレイグニッション
通常のタイミングよりも早い段階で点火し、燃焼が始まってしまう現象のことです。
圧縮前に何らかの原因で燃料が高温になったり、圧縮された空気が発熱したりすると、点火プラグが作動する前に着火してしまい、大きな爆発が起こってしまう場合があります。
その後、さらに通常のタイミングでプラグから火花が飛ぶため、火種が2つになり、爆発力も2倍となります。
一般車でプレイグニッションが起こることは少ないですが、高圧縮比のエンジンを載せた車や、素人が改造した車などで発生しやすい傾向にあります。広義ではデトネーションの一種で、発生したときにエンジンから金属音がする症状も共通しています。1~2回程度なら問題ありませんが、プレイグニッションを繰り返すとエンジンに負担がかかり、トラブルの原因になることもあります。
ディーゼルノック
ディーゼル車は高温と高圧によって自然発火させる仕組みになっているため、点火プラグで着火するガソリン車に比べるとノッキングが起こりやすいといわれています。異常燃焼ではありませんが、騒音や振動、すすなどが出るので、なるべく発生を抑える必要があります。
ノッキングが起こる原因
ノッキングが発生してしまう原因は様々ですが、その中でも特に多い4つの要因について詳しく解説していきます。
- 異なるオクタン価を持つガソリン
- ノックセンサーの不具合
- カーボンなどの不純物の付着
- エンジンオイルが侵入して着火
異なるオクタン価を持つガソリン
ガソリンには、車種別に適したオクタン価というものがあります。オクタン価は、ガソリンが燃焼する際に発生するノッキングを防ぐ性能を示す数値です。数値が高いほど、ノッキングが起こりにくくなります。
ガソリンは、オクタン価によってレギュラーとハイオクに分類されます。ハイオクはレギュラーよりもオクタン価が高いため、ノッキングが発生しにくい性質を持っています。
しかし、レギュラー車のエンジンにハイオクガソリンを入れても、エンジンの燃焼機能には影響を与えません。逆に、ハイオク車のエンジンにレギュラーガソリンを入れると、エンジンの燃焼効率が低下し、ノッキングが発生する可能性があります。
そのため、車の取扱説明書を確認し、適正なオクタン価のガソリンを使用することが重要です。
ノックセンサーの不具合
現代の自動車エンジンには、ノッキングと呼ばれる異常燃焼を検知するノックセンサーが広く搭載されています。このセンサーは、エンジン内部で発生するノッキング特有の振動を感知し、点火時期を適切に調整することで、ノッキングを抑制する役割を担っています。
もし、ノックセンサーに不具合が生じると、エンジンの回転上昇が鈍くなり、ノッキングが発生しやすくなるため注意が必要です。
カーボンなどの不純物の付着
燃焼室にカーボンが堆積したままの状態が続くと、ノッキングが発生するリスクが高まります。これは、燃焼室内に付着したカーボンがエンジンの振動によって高温となり、火種となって異常燃焼を引き起こすためです。
また、カーボンなどの不純物がエンジン内部に残留すると、燃料の燃焼効率を最大限に引き出せず、エンジンの性能低下に繋がります。
エンジンオイルが侵入して着火
エンジンオイルは、燃焼室に侵入してしまう場合もあります。これは、オイルがバルブステムから伝わったり、ピストンとシリンダー間に残ったりすることで起こります。高温になったエンジンオイルは、異常燃焼を引き起こし、ノッキングの原因となることもあります。
ノッキングを起こさない対策
せっかくの快適な空間を、ノッキング音が台無しにしてしまうのは残念ですよね。そこで、ノッキングを抑制するためのヒントをいくつかご紹介します。
異音があるかどうかを確認する
車を走らせる際は、エンジンルームから発せられる音に耳を傾けてみましょう。特に加速時や上り坂など、エンジンに負荷がかかる状況では、ノッキングと呼ばれる異常燃焼が発生しやすいため、”カラカラ”や”カリカリ”といった異音が聞こえるかもしれません。
普段からエンジン音を意識することで、小さな異変にも気づくことができるでしょう。
スパークプラグが摩耗していないかを確認する
ガソリンエンジンの心臓部ともいえる点火プラグ(スパークプラグ)は、定期的な点検が欠かせません。高圧電流によって電極間で生じる火花が混合気を着火させる仕組みですが、燃焼による高温や高圧、放電による衝撃によって電極は徐々に摩耗していきます。
この摩耗が進むと、エンジンのかかりが悪くなったり、ノッキングが発生したりする原因となるため注意が必要です。
点火プラグを外して電極の状態を確認し、摩耗が目立つ場合は交換を検討しましょう。適切なタイミングでの交換は、エンジンの性能維持に役立ちます。
ピストンにカーボンが付着していないかを確認する
エンジンの心臓部ともいえる燃焼室に、燃焼の副産物であるカーボン(すす状の燃えカス)が蓄積すると、ノッキングと呼ばれる異常燃焼を引き起こす可能性があります。これは、ピストンに付着したカーボンが燃焼ガスの熱によって高温の火種となり、混合気を爆発的に燃焼させてしまうためです。
短距離走行を繰り返す、いわゆる「チョイ乗り」では、燃焼室にカーボンが堆積しやすく、ノッキングのリスクが高まります。そのため、長距離走行や高速走行を定期的に行い、エンジンの良好な燃焼状態を維持することが大切です。
車のノッキング対策を種類別に紹介
車のノッキングを抑えるための対策法を種類別にまとめました。
カーノック・低速ノッキングの対策
運転ミスによるカーノックや低速ノッキングの場合、エンジンに深刻なダメージを与えるケースはほとんどなく、適切な運転を意識するだけで解決します。ただ、マウントの劣化によるノッキングの場合は、部品交換を検討したほうが良いでしょう。
デトネーション・プレイグニッションの対策
デトネーションやプレイグニッション対策では、燃焼室内の温度を下げ、意図しない着火・燃焼を防ぐことが大切です。具体的には、インタークーラーの巨大化または前置きによって吸気温度を下げたり、ターボのブースト圧を低下させたり、ラジエーターを2層または3層式にして冷却水の温度を下げるなどの対策が有効です。
また、燃焼しにくい(=オクタン価の高い)ハイオクガソリンを使用するのも異常燃焼の抑制に役立ちます。
ディーゼルノックの対策
ディーゼル車に使われる燃料の着火性はセタン価によって表されます。セタン価が高いものほど自己着火しやすく、ディーゼルノックの発生を抑えられます。
また、ディーゼル車は空気の温度上昇によって燃料を自然発火させる仕組みになっているため、圧縮比が大きくなるほど着火性がよくなります。
現在販売されている車でディーゼルノックが起こる可能性は低いですが、万が一気になる現象が起こった場合は早めに専門の業者へ見てもらいましょう。
ノッキングの修理費用はいくらかかる?
エンジンノッキングの修理費用は、その原因や必要な修理内容によって大きく異なります。燃料添加剤による簡易的な対応であれば、数百円から数千円程度で済む場合もあります。
一方、プラグ、マウント、フリーホイールの交換が必要な場合は、数千円から数万円の出費を見込む必要があります。最悪の場合、エンジンに深刻なダメージが加わり、エンジンの載せ替えが必要となるケースも考えられます。
その際には、20万円から50万円以上の高額な修理費用がかかってしまうことも。車の状態をしっかりと把握し、適切な修理方法を選択することが、費用を抑える上で重要です。
修理せず放置するとどうなる?
ノッキング現象を放置すると、エンジン本体に深刻なダメージが及ぶ可能性があります。ピストン、バルブ、コンロッドなどの重要な部品が破損し、エンジン全体に悪影響が波及する恐れも。最悪の場合、エンジン交換が必要となり、20万円から50万円という高額な費用が発生する可能性も。ノッキングが発生した際は、早急に点検や修理を依頼することをおすすめします。
ノッキングの種類によっては放置せず、適切な対策を行おう
運転ミスによるカーノックや低速ノックの場合はエンジンに大きな影響を与える可能性は低いですし、適切な運転を心掛けるだけで問題は解消されます。
しかし、デトネーションやプレイグニッションの場合、くり返しノッキングが発生するとエンジンに大きな負担がかかって故障の原因となりますので、必要な装備をつけたり、使用するガソリンの種類を変えたりして早めに対策を行いましょう。
万一ノッキングによってエンジンが破損した場合、修理にかなりの費用がかかってしまうので、車買取業者に売却することをおすすめします。車の廃車をされたい場合は、ソコカラにご相談ください。安心してお任せできる廃車手続きをサポートいたします。
この記事の監修者
浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
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