- 2024.11.01
全損による買い替え費用は保険を使うことができる?注意点について
車の事故や損傷が深刻な場合、車は「全損」と判断されることがあります。全損とは、修理しても走行できる状態まで戻せない場合や修理費用が車両価値を大きく上回る場合に使われる言葉です。
このような状況になると、車の所有者は修理をあきらめて新しい車に買い替えるか、廃車にする選択を迫られることが多いです。本記事では、全損の定義や保険の使い方、買い替えに関連する特約、そして車の処分方法について詳しく解説していきます。

全損の定義とは
全損には、物理的に車が完全に壊れている「物理的全損」と、修理可能であってもその費用が車の市場価値を上回る「経済的全損」の2つのタイプがあります。これらの違いを理解しておくことは、事故後の適切な対応を選ぶために大切です。
物理的全損と経済的全損
一般的に物理的全損は、事故によって車両が物理的に修理不可能な状態を指します。例えば、車のフレームが大破したり、エンジンが完全に破損した場合、技術的に修理が不可能になります。
この場合、車は元の状態に戻すことができないため、物理的全損とみなされれるのです。物理的全損は、修理を試みることがほぼ不可能であり、新しい車に買い替える以外の選択肢がなくなります。
一方で、経済的全損は、車が修理可能であっても、修理費用が車の市場価値を大きく上回る場合を指します。例えば、車の時価が50万円であるのに対して、修理費用が100万円かかるといった場合がこれに該当します。このような場合、修理するよりも新しい車を購入した方が合理的であると判断されるでしょう。
経済的全損は、修理を行うことが技術的には可能ですが、費用対効果の面で不合理なため、修理が現実的な選択肢とはならないことが多いです。
賠償額の算定
全損と認定された場合、保険会社は車両の時価額を基に賠償額を算定します。時価額は、車の年式やこれまで走行した距離など、車両の状態に基づいて決定され、新車購入時の価格ではなく、事故発生時の市場価値が基準となります。特に経済的全損の場合、思っていたよりも低い賠償額が提示されることが多いのは、このためです。
時価額の算定方法は保険会社によって異なりますが、一般的には公的な中古車価格データベースや、車両査定の専門機関が提供するデータに基づいて行われます。
車の状態が良い場合や人気車種である場合には、時価額が高くなる傾向がありますが、反対に古い車や走行距離が多い車は、期待していた額よりも低くなることが一般的です。全損となった場合、修理費用を超える金額が支払われることは基本的にないため、この点を理解しておくことが大切です。
関連記事:自動車事故の全損とは何か?基準と保険などの対応策を詳しく解説
全損したら保険を使うことができる?
全損が発生した際、車両保険を利用することで修理費用や買い替え費用を補償してもらうことができます。ただし、保険を利用する場合には、いくつかの注意点があります。ここでは、具体的な注意点について解説します。
全損に対する補償を受けることができる
全損事故が発生した場合、車両保険に加入していれば、損失に対する補償を受けることができます。保険会社は、全損と判断された車両に対して時価額を基に保険金を支払う仕組みです。この保険金は、新車購入時の価格ではなく、事故時点での市場価値に基づいて決定されます。補償を受けることで、損失をカバーできるため、大きな経済的負担を軽減できます。
ただし、全損事故の場合は、免責金額(自己負担額)や保険金支払い後の等級の変動に注意が必要です。保険金が支払われることで、次年度以降の保険料が上がる可能性があるため、事故の規模や損害額を見極めながら保険の使用を判断することが大切です。
車両保険を使うと所有権は保険会社に
車が全損して車両保険を使う場合、車の所有権が保険会社に移行します。これは、保険会社が保険金を支払うことで、車両の残存価値を回収するために車を引き取る場合に発生します。全損事故後に車を廃車にする手続きを保険会社が代行することが多く、所有者はその車を自由に処分できなくなる可能性があるでしょう。
全損して買い替える場合の特約について
全損事故が発生した場合、車両保険に付帯されている特約を利用することで、買い替え費用や諸費用を軽減できることがあります。ここでは、全損事故後に役立つ新車特約、全損時諸費用特約、対物超過修理費用特約について解説します。
新車特約
新車特約は、全損事故が発生した場合に、新車の購入費用を補償してくれる特約です。通常の車両保険は、事故時点での車両の時価額が補償額の基準となりますが、新車特約を付けておくことで、補償される場合があります。特に新車購入後数年以内に全損事故が発生した場合、この特約は非常に有効です。
新車特約は、車両の購入時期や保険契約内容によって異なりますが、一般的には購入後1〜3年以内に全損事故が発生した場合に適用されることが多いです。この特約を利用することで、全損事故後も同等の新車を購入するための経済的負担を軽減できます。ただし、この特約が付帯されていない保険契約もあるため、保険契約時にしっかりと確認することが大切です。
全損時諸費用特約
全損時諸費用特約は、全損事故が発生した際に、車の買い替えに伴う諸費用を補償するための特約です。車両保険は、通常車の時価額のみが補償対象となりますが、全損時諸費用特約を付けることで、新車を購入する際の手続き費用や登録費用、リサイクル料金などがカバーされます。
この特約は、新しい車を購入する際に予想外の費用が発生した場合でも、安心して買い替えを進めることができるのがメリットです。全損時に諸費用が思った以上にかかることは少なくないため、この特約を活用することで、自己負担を大幅に削減できます。
対物超過修理費用特約
対物超過修理費用特約は、全損事故で相手方の車に対する修理費がその車の時価額を超えた場合に、超過分の修理費用を補償する特約です。通常、対物賠償保険は相手方の車の時価額までしか補償されませんが、この特約を利用することで、修理費が時価額を超える場合にも対応できます。
この特約は、特に高級車や輸入車など、修理費用が高額になるケースで役立ちます。事故の相手方が高額な修理費用を要求してきた場合でも、対物超過修理費用特約を付けておけば、自己負担を抑えることができ、安心して対応することが可能です。
全損した車を買い替える場合の注意点
全損した車を買い替える際には、いくつかの注意点があります。保険の利用方法や将来的な保険料への影響、さらに修理と買い替えのどちらが合理的かを判断するためのポイントなど、慎重に検討することが求められます。
保険を使うと保険料が上がる可能性もある
全損事故に対して保険を利用した場合、その後の保険料が上がる可能性があることを考慮しなければなりません。車両保険を使用すると、通常は等級が下がり、次回の保険契約時に割引率が減少します。等級制度は、事故を起こさない限り等級が上昇し、保険料の割引率が高くなりますが、事故を起こして保険を使用した場合には、その逆が起こります。
特に軽微な損傷や、経済的全損の場合は、保険を使わずに自己負担で修理や買い替えを行う方が、将来的な保険料の増加を防ぐことができるでしょう。そのため、保険を使用するかどうかは、慎重に判断する必要があります。
保険の保証を受けられない可能性もある
全損事故のすべてにおいて保険が適用されるわけではありません。事故の原因や状況、保険契約の内容によっては、保険が適用されない場合もあります。
例えば、飲酒運転や無免許運転など、法的に問題のある運転行為が原因となった事故は、保険の適用対象外となることが多いです。また、保険契約の内容によっては、全損事故であっても一定の条件を満たさなければ保険金が支払われない場合があります。
保険の保証を確実に受けるためには、事故発生時に速やかに保険会社へ連絡し、適切な手続きを行うことが求められます。また、保険契約時には、全損事故に関する補償内容を詳しく確認し、自分に合った保険内容を選ぶことが大切です。
修理と買い替えで見積もりをとる
全損と判断された場合でも、車が修理可能なケースもあります。そのため、事故後には修理と買い替えのどちらが合理的かを判断するために、修理業者からの見積もりを取得することが大切です。修理費用が車の時価額を超える場合には買い替えを検討すべきですが、軽微な損傷であれば修理して再び使用するという選択肢も考えられます。
また、修理と買い替えの選択を行う際には、保険金の支払額と自己負担額のバランスをしっかりと考慮する必要があります。全損事故後の修理費用が予想外に高額である場合、結果的に買い替えの方がコストパフォーマンスが良くなることもあるため、見積もりを複数の業者から取得し、比較することが大切です。
事故の場合は相手と直接の話し合いは避ける
事故が発生した場合、感情的になりがちですが、相手と直接の交渉を行うのは避けるべきです。特に、全損事故は保険会社を通じて交渉を進めることが大切です。相手との個別交渉は、法的問題や誤解を招く原因となる可能性が高く、後々のトラブルに発展することも少なくありません。
保険会社は事故処理のプロフェッショナルであり、相手方との交渉や損害賠償の適正な調整を行います。自分で交渉を試みることは避け、冷静に保険会社の指示に従いながら、事故後の対応を進めることが賢明です。
全損した車の残債
全損した車にローンの残債がある場合、その処理も大きな課題となります。保険金を受け取った場合でも、その金額がローン残高を全額カバーできないことがあります。このような場合、車の所有者は残った債務を引き続き返済しなければならず、経済的な負担が残るかもしれません。
ローンが残っている場合、保険会社とローン会社の間で調整が行われ、保険金の一部がローンの返済に充てられることがあります。しかし、全額返済できない場合は、車がなくなった後もローンを支払い続けることが必要になるため、早急に金融機関との相談を行い、適切な返済計画を立てることが大切です。
全損した車の引取先
全損した車をどう処分するかについても、所有者は慎重に判断する必要があります。引取先としては、中古車買取業者や廃車買取業者が一般的ですが、それぞれのメリットとデメリットを考慮して選択することが大切です。
中古車買取業者
経済的全損で、車が修理可能な場合は、中古車買取業者に査定を依頼することが考えられます。特に、車の年式や状態が良ければ、全損車両でも買取価格が付くことがあります。中古車買取業者は、車を修理して再販することを目的としているため、修理費用を差し引いた金額で査定を行います。
しかし、全損車両は損傷歴があるため、通常の車よりも大幅に低い査定額となることが一般的です。中古車市場での再販価値が低いと判断された場合には、買取価格が非常に低くなる可能性があるため、査定時には慎重に交渉を行うことが大切です。
廃車買取業者
物理的に全損しており、修理が不可能な場合や、修理費用が車両価値を大幅に超える場合は、廃車買取業者に依頼することが適しています。廃車買取業者は、車を部品や素材としてリサイクルするために買い取る業者であり、車が動かない状態でも引き取ってもらえることが多いです。
廃車買取業者は、車の状態に関係なく引き取ってくれるため、全損車両を手軽に処分する方法としては非常に便利です。ただし、買取価格は非常に低くなる傾向があり、場合によっては廃車処理費用を請求されることもあります。そのため、事前に業者と価格や手続き内容を確認することが大切です。
関連記事:故障車でも買取できる?高く売るコツと不調時の対処法一覧
まとめ
全損事故は、車の所有者にとって大きなショックと経済的負担を伴う出来事です。しかし、適切な保険や特約を活用することで、損失を最小限に抑え、迅速に車の買い替えや処分を進めることが可能です。
物理的全損と経済的全損の違いを理解し、賠償額の算定方法や保険利用時の注意点に加え、全損時の車の引き取り先や手続きに関する正しい知識を持って対応することが求められます。
全損事故後の対応は、冷静な判断とプロフェッショナルなサポートが不可欠です。保険会社や修理業者、買取業者と適切に連携し、最善の選択をすることで、事故後の生活や経済的負担を軽減できます。
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この記事の監修者
浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
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