車種にかかわらず、自動車を動かすにはギアチェンジが必要不可欠です。AT車の場合、ほぼ自動的にギアチェンジを行ってくれるため、普段ギアのことを気にしている方は少ないでしょう。ギアは長年使用していると劣化が進み、故障や不具合を起こす危険性があります。万一の場合に備え、ギアの基本的な知識や仕組みを知っておくことがおすすめです。本記事で車のギアの意味と仕組みについて、わかりやすく解説します。
事故車買取についてはこちらから

ギアの必要性と仕組み
ギアとは、すべての車に搭載されている変速機(トランスミッション)を構成する主要パーツのことです。
トランスミッションは、ギア(歯車)とシャフト(回転軸)で構成されており、エンジンから出力される駆動力をタイヤに伝える役割を果たしています。
トランスミッションのギアを変更すると、エンジンから伝わる動力のトルクや回転数・回転方向を調整可能です。その瞬間の走行状況に適した駆動力を生み出せます。
たとえば低速ギアに入れると回転数は低下しますが、小さな力でより大きな力を生み出せるため、発進時や急坂の走行に適しています。
一方、平地では走行している間に徐々に勢いがつくので、ギアを上げた方が回転率がアップして効率よく走行できるのです。
かつては、走行状況に合わせてギアを手動で入れ替えるマニュアルトランスミッション(MT)車が主流でしたが、近年は状況に応じて自動的にギアチェンジしてくれるオートマチックトランスミッション(AT)車が9割以上の割合を占めています。
AT車のギアの意味を解説
手動でギアを入れ替える必要のあるMT車と、自動でギアチェンジ可能なAT車では、搭載されているギアの種類が異なります。本章でAT車のギアについて解説します。
パーキング(P)
駐車時に使用するギアです。
ギアをパーキングに入れるとトランスミッションの内部でロックがかかり、車が動かせない状態になります。ただ、何らかの理由で車が動いてしまう可能性もゼロではありません。あわせてパーキングブレーキを使用することが大切です。
リバース(R)
車をバックさせる際に使用するギアです。大抵の車はRに入れると音が鳴り、他のギアと区別がつきやすい仕組みになっています。
ドライブ(D)
車を発進・走行させる際に使用するギアです。自動でギアチェンジしてくれるAT車の場合、走行時のギアは基本的にDに入れたままになります。
ニュートラル(N)
エンジンとタイヤを一時的に切り離し、動力が伝わらないようにするギアのことです。 AT車の場合、たとえアクセルペダルを踏んでいなくても、時速数km/h程度のスピードでのろのろと車が前進する「クリープ現象」が発生しますが、ギアをNに入れていれば車を停止できます。
セカンド(2)
ギアを2速に固定する際に使うギアです。2速までしか変速されないため、坂道を上っている際や、長めの下り坂でスピードを抑えたい時に使用します。
ロー(L)
最も低い1速で走る際に使用するギアです。急坂を下る際など、セカンドギアよりも強くエンジンブレーキをかける時はLにギアを入れます。
オーバードライブ(OD)
最速ギアのことです。5速AT車なら最高の5速にあたり、一般的にはシフトノブの横についているスイッチを押し込むことでON/OFFを切り替えられます。
ODをONにしたまま走行すると、エンジン回転数を押さえながら走行できるため、燃費や運転時の静粛性を高められます。
ただ山道など道路状況が悪い場所の運転には不向きです。 普段はONにしておいて、オフロード走行時のみ手動でOFFに切り替えた方がよいでしょう。
MT車のギアの意味を解説
MT車では、走行状況に応じて運転手が自らギアチェンジしないといけません。AT車よりも各ギアの意味を理解し、適切なギアチェンジを行ってスムーズな運転を目指しましょう。

ローギア(L)
発進時や急坂を上る際に使用します。
セカンドギア(2)
発進の次に使用するギアです。長い坂道を下る際や、エンジンブレーキを効かせたい際に活用します。
サードギア(3)
2の次に使用するギアです。エンジン回転数に応じて使用します。
トップギア(4)
3の次に使用するギアです。60km程度のスピードを出す際に多く使用します。
オーバートップギア(5)
5速のギアで、主に高速道路で使用します。
リバース・バックギア(R)
車をバックさせる際に使用します。
なお、車によってはトップギアが5速、オーバートップギアが6速の場合もありますが、基本的な役割は同じです。
車のギア切り替え手順と注意すべきポイント
車のギアチェンジは、オートマとマニュアルで大きく違います。AT車は簡単ですが、低速での発進に注意が必要です。一方、MT車はクラッチ操作など複雑な動作が必要になります。それぞれの特徴と安全運転のためのポイントを解説します。
AT車のギアチェンジ方法
AT車は、ドライブギアに入れた状態でもアクセルペダルに触れていなくてもゆっくりと前進します。これはクリープ現象と呼ばれ、動力伝達系が完全に遮断されないAT車特有の性質です。信号待ちなどでブレーキペダルへの力が弱いと、車両が僅かに前進し、最悪の場合、接触事故に繋がる可能性があります。
また、上り坂でドライブギアのままアクセルペダルから足を離し、後退させる操作も危険です。ギアの回転方向と車両の進行方向が逆行することで、ブレーキの効きが悪くなったり、ステアリング操作が困難になったりするなど、車両の不具合を引き起こす原因となります。下り坂においても、リバースギアで前進させると同様のトラブルが発生する可能性があります。
さらに、パーキングギアへの切り替えは、必ず車両が完全に停止してから行うべきです。走行中の急停止はトランスミッションに大きな負担をかけ、故障の原因となるため注意が必要です。
MT車のギアチェンジ方法
MT車とAT車の運転には、共通点と相違点があります。バックやパーキングといったギアチェンジの操作は、どちらも慎重に行う必要があります。しかし、MT車にはクラッチ操作という、AT車にはない重要な要素が加わります。
発進時やギアチェンジ時には、クラッチの半クラッチ操作や切り替えが不可欠です。この操作を誤ると、エンストを引き起こし、後続車との衝突事故に繋がる危険性も潜んでいます。熟練すればスムーズなクラッチ操作が可能になりますが、運転に慣れていないうちは、細心の注意を払うことが大切です。
関連記事:エンストとは?オートマでも起きる?原因と対処法を詳しく解説!
車のギアが動かないトラブルの原因は?
車のギアが動かない…そんなトラブルに見舞われた経験はありませんか?突然の事態に戸惑う気持ちも理解できます。ギアが動かない原因は様々ですから、落ち着いて一つずつ確認していくことが大切です。まずは、点検から始めましょう。

エンジンをチェックする
車のギアが動かない原因として、エンジンが関係している場合があります。AT車は、エンジンを始動させないとシフトレバーは操作できません。一方、MT車は、エンジンが停止していてもシフトレバーは動きます。普段MT車に乗っている方は、この違いに戸惑うこともあるかもしれませんね。まずは落ち着いて、エンジンをかけてみましょう。それでもギアが動かない場合は、ガソリン切れの可能性も考慮が必要です。給油して状態を確認してみてください。
関連記事:車のエンジンが掛かからない!?原因と対応方処法を解説
バッテリーをチェックする
シフトレバーが動かない時は、バッテリーのチェックも重要です。MT車なら、バッテリー上がりでもシフトレバーは操作できますが、AT車の場合はエンジン始動が不可欠なため、バッテリーが上がるとシフトレバーも動きません。そのため、正常なバッテリーとジャンプケーブルで繋いでエンジンを始動させるか、ガソリンスタンドで充電、あるいはバッテリー交換といった対処が必要です。
ハンドルにロックがかかっていないかをチェックする
車の盗難防止策として、ハンドルロック(ステアリングロック)が標準装備またはオプションで装備されている車種、グレードがあります。このロックは、AT車でもMT車でも、作動中はエンジン始動を確実に阻止します。さらに、AT車の場合はシフトレバーの操作も不可能となり、二重のセキュリティとなります。出発前に、ハンドルロックが確実に解除されていることを必ずご確認ください。取扱説明書をよく読んでロック解除を行い、エンジンが始動し、ギアがスムーズに動くことを確認してから運転を開始しましょう。
ペダルを踏んでいるかをチェックする
車を走らせるには、まずギアを操作する必要があります。AT車では、パーキング(P)の状態から発進するには、ブレーキペダルを踏んでからシフトレバーを動かす必要があります。一方、MT車の場合は、クラッチペダルを踏み込み、シフトレバーをローギア(L)またはファーストギア(1)に入れて、アクセルペダルを踏みながらゆっくりとクラッチペダルを離していくことで、車は動き出します。出発前に、ブレーキやクラッチペダルをきちんと踏んでいるか確認しましょう。
ヒューズをチェックする
AT車のギアチェンジは、ブレーキシステムの正常な作動が不可欠です。ブレーキそのものの故障だけでなく、ブレーキランプの球切れやヒューズの断線といった些細なトラブルでも、シフトレバーの操作ができなくなる場合があります。
ブレーキランプのヒューズは、通常ダッシュボード下のヒューズボックスに収められています。もしヒューズが断線している場合は、新しいヒューズと交換しましょう。しかし、ヒューズ交換後もブレーキランプが点灯しない場合は、専門の整備工場に点検を依頼することをお勧めします。安全運転のためにも、早めの対処が重要です。
トランスミッションの故障
シフトレバーは操作できるものの、異音や衝撃を伴う場合は、トランスミッションの故障が疑われます。その原因の一つとして、トルクコンバーター内のATF(オートマチックトランスミッションフルード)の漏れが挙げられます。ATFは、トランスミッションをスムーズに動作させるための重要なオイルです。このオイルが漏れたり劣化したりすると、ギアの切り替えがスムーズに行われなくなり、燃費の悪化や加速不良といった症状が現れます。ATFの劣化であれば交換で済むこともありますが、オイル漏れやそれ以上の故障であれば、修理が必要となります。このような症状が現れたら、早めの点検・修理を専門業者に依頼することをおすすめします。
関連記事:トランスミッションが故障しても乗り続けるリスクとは?
車のギアが故障したときの対処法は?

自転車が突然動かなくなったり、耳障りな異音がしたり…そんなトラブル、経験した方もいるのではないでしょうか? 対処に困ってしまうケースも多いですよね。日頃のメンテナンスでトラブルを未然に防げることもありますが、間違った方法でメンテナンスすると、かえって故障を招く可能性も。そこで、ギアの故障の原因と効果的な対処法を分かりやすく解説します。
経年劣化が故障の原因
車のギアが故障する原因として、時間の経過による劣化が大きな割合を占めています。走行距離が10万キロメートルを超えると、ギアへの負担が蓄積し、性能低下は避けられません。しかし、ただ年月が経つだけでなく、ドライバーの運転方法もギアの寿命に大きく影響します。
例えば、頻繁な急加速はギアに大きな負荷をかけ、早期の劣化を招きます。これは、アクセルを急に踏み込むことで、ギアに瞬間的に大きな力が加わるためです。一方、ゆっくりとアクセルを踏み込み、スムーズに加速する運転を心がければ、ギアへの負担を軽減し、長持ちさせることができます。
ギアの寿命を長く保つためには、無理のない運転が大切です。急加速や急ブレーキを避け、エンジン回転数を適切に調整しながら走行することで、ギアへの負担を最小限に抑えることができます。日頃の運転習慣を見直し、ギアへの配慮を意識することで、車の寿命を長く保つことに繋がるでしょう。
故障時は修理が必要
車のギアに不具合が生じた場合、修理が必要となるでしょう。しかし、ギアの修理は容易ではなく、複雑な作業を伴うため、専門家の技術が求められます。具体的には、トランスミッションの交換またはオーバーホールという選択肢が考えられます。オーバーホールは、摩耗した部品の交換、各部の精密な調整、徹底的な洗浄など、多岐にわたる作業を含みます。ギアの故障は、交換またはオーバーホールによって確実に修復できますが、オーバーホールだけでも20万円を超える費用、交換となるとさらに高額な修理費用が発生する可能性が高いです。こうした高額な修理費用を考慮すると、修理よりも廃車や買い替えといった選択肢が現実的と言えるかもしれません。
故障前にオイル交換を定期的に実施する
車のギアをトラブルから守る秘訣は、定期的なミッションオイル交換にあります。トランスミッション内部には、エンジン駆動における摩擦を軽減するベアリングをはじめ、無数の金属部品が精密に組み合わされています。これらの部品をミッションオイルで潤滑することで、金属同士の摩擦による磨耗を抑制し、サビの発生を効果的に予防できるのです。
しかし、オイル交換を怠ると、金属部品の摩耗が加速し、車の寿命を縮めることにつながります。さらに、オイル漏れが発生すると、ギアそのものの故障にも発展する可能性があるため、細心の注意が必要です。専門家によると、ミッションオイルは2万キロから3万キロ毎の交換が推奨されています。長く車と付き合うためには、この定期的なメンテナンスを欠かさず行いましょう。その小さな心がけが、あなたのドライブを長く、そして快適に支えるのです。
ギアの意味と仕組みを理解し、効率の良い運転を心がけよう
車のギアはそれぞれに意味があり、走行状況に応じて上手に使い分けるのがポイントです。
AT車はMT車に比べるとひんぱんなギアチェンジは不要ですが、急坂や高速道路を走行する際など、適切なギアに入れ替えれば車への負担を減らせます。
逆に、適切なギアチェンジを行わないと車に負担がかかり、故障や不具合の原因になるので注意してください。 トランスミッションの修理には多額の費用がかかりますので、ギアチェンジは正しく行い、安全&快適なドライブを楽しみましょう。
車買取「ソコカラ」は、世界110カ国と取引する独自の販路があり、全国どこでも高額買取可能です。査定費用や、レッカーなど引き取り費用、廃車手続きも無料で行っています。オンライン査定やLINE査定、電話査定も行っているので、ぜひ、ご相談ください。

この記事の監修者
浅野 悠
「株式会社はなまる」小売事業部 事業部長。1987年東京都生まれ。小学生から大学生までの間レーシングドライバーを目指し数多くの大会に出場。20代で飲食店経営に携わったのち、野菜配達の仕事に就くも、幼少期からの車への魅力を忘れられず自動車業界へ。中古車査定士の資格を取得し、自動車に関する豊富な知識をもとに、おもに車に起きるトラブルの対処法や車の豆知識に関するコラムを執筆。
メーカーを選択してください
国産車
トヨタ
レクサス
日産
ホンダ
マツダ
スバル
スズキ
三菱
ダイハツ
いすゞ
光岡自動車
日野自動車
UDトラックス
三菱ふそう
輸入車
メルセデスベンツ
AMG
BMW
アウディ
フォルクスワーゲン
オペル
ポルシェ
スマート
キャデラック
シボレー
ジープ
ハマー
GMC
フォード
リンカーン
クライスラー
ダッジ
テスラ
ロールスロイス
ベントレー
ジャガー
ランドローバー
ルノー
ロータス
ローバー
ボルボ
マセラティ
ミニ
プジョー
フェラーリ
ランボルギーニ
フィアット
ヒョンデ
シトロエン
サーブ
アルファロメオ
アバルト
アストンマーティン
MG
BYD
トライアンフ
その他・不明
車種を選択してください
車種
関連記事
-
-
- 事故車のお役立ちコラム
- 2024.09.26
人身事故の違反点数や罰金は?免停の基準も解説!
-
-
-
- 自動車のお役立ちコラム
- 2025.01.16
【図説】バッテリー上がり時の適切な充電方法
-
-
-
- 自動車のお役立ちコラム
- 2024.09.10
車のエンジンがかからない!電気はつくのに…その原因と対処法を徹底解説
-
-
-
- 事故車のお役立ちコラム
- 2025.01.07
動物を轢いて逃げたらどうなる?飼い主がいた場合の対応も徹底解説
-
-
-
- 事故車のお役立ちコラム
- 自動車のお役立ちコラム
- 2024.09.26
軽い事故・人身事故の違反点数はどのくらい?加算される違反点数や処分の流れを解説
-
-
-
- 故障車のお役立ちコラム
- 2024.11.01
ハンドルを切ると異音がする原因と対処法について詳しく解説!
-